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広報氏がブリーフイングで「念願叶って、遂に導入できました!」と力説した通り、プジョーの現行ディーゼルユニット「Blue HDi」は、実に素晴らしいパワーユニットだった。そのドライバビリティは現在日本に導入されているプレミアム・ディーゼルたちと比べてもまったく引けを取らないどころか、一番優れているとさえ感じた。


そのラインナップは120ps/300Nmを発揮する1.6リッター直噴ターボと、180ps/400Nmを発揮する2リッター直噴ターボの2本立て。前者が308/308SWのスタンダードグレードである「Allure」(アリュール)に、後者が308/308SW、508/508SWのハイパフォーマンスグレードである「GT」に搭載される。

ちなみに「Blue HDi」のブルーは、クリーンディーゼルを意味している。エンジン直下の「酸化触媒装置」が炭化水素と一酸化炭素を除去し、その直後に続く「SCR」(選択還元触媒)に「AdBlue」(尿素水溶液)を吹き付けることで光化学スモッグの原因となる窒素酸化物(NOx)を無害な水と窒素に変換。最後は「DPF」と呼ばれるフィルターが、PM(粒子状物質)を99・9%除去し、ユーロ6はもちろん日本の厳しい環境基準にもこのエンジンを適合させている。

HDiは「High Pressure Direct Injection」の略称。コモンレール式のインジェクターは2000バールの高圧燃料噴射を可能としており、きめ細やかな燃料の噴射制御によって、燃焼効率を上げ環境性能の向上とパワーを引き出すことに成功している。
またタービンの排気側には「可変ジオメトリーベーン」を採用し、低速域から高速域までターボラグの極めて少ない走りを可能とした。

まず試したのは1.6リッターエンジンを搭載した308SW。その出力はたったの120psと、308とはいえワゴンボディを引っ張るのにはちょっと厳しいかな? と予想したが、300Nmの最大トルクがほぼ全域で発揮されるエンジン特性と、6速EATの見事な協調制御で、箱根の山道を軽々と駆け抜けてくれた。むしろ「コイツやるな!」という感じである。


またプジョーはその遮音が抜群で、車内にいる限りはエンジンからのノック音や振動がまったく気にならない。この静粛性はハッキリ言って、プレミアムブランドのディーゼルカーよりも素晴らしいと思う。


そんな力強い走りと静粛性が、308の新世代シャシーに組み合わさると、もうたまらない。路面からの入力はストロークフルなサスペンションが見事に吸収し、ステアリングを切ればガソリン車よりも60kgは重たいノーズを無理なく曲げる。プジョーはガソリン車においても伝統的にトルク重視のエンジン特性で、このしなやかなフットワークと共にアベレージ速度を高める走りが信条だったが、その性格がディーゼル・エンジンの搭載によって、さらに高められていた。街中のストップ&ゴーでは少ないアクセル開度でも車体がスッと進み、そのトルクをもって高速域までばっちりカバーする。エンジンパワーの額面こそ大したことないけれど、実用域ですこぶる速い。これがプジョーの真骨頂だよね! と思わず唸ってしまうアリュールの仕上がりだった。

そのキャラクターは、2リッターを搭載する308GTではさらに磨きが掛けられていた。いや、ちょっと磨きすぎじゃね? と思ったくらい、分厚いライドフィールが味わえる。


出力にして+60ps/+100Nmものアドバンテージがあるパワーユニットを、SWに比べ全長で325mm、ホイルベースで15mm短い5ドアハッチバックボディに搭載することからも、タイヤは18インチとなりその足回りはアリュールに比べしっかりと固められている。

路面からの入力をハッキリとステアリングに伝えながらも、ハーシュネスはドシッと受け止め見事に減衰する足回りは頼もしく、まさにGTと呼べる安定性。同じ308でも速さと俊敏性を全面に押し出したGTiに比べれば日常域での乗り心地は快適で、しかもパーシャルスロットルを多用する普段の走りでは、十分過ぎるほど速い。


ちなみにこのGTグレードは、スポーツボタンを押すことで電動パワーステアリングの制御が重くなり、ブーストの掛かり方もより先鋭化される。


この制御は小さなステアリングとクイックなそのギア比にはちょうどよい安定感。アクセルをベタ踏みにせずともどんどんスピードが乗るディーゼルターボの特性と共に、中高速コーナーではハイアベレージな走りが愉しめて、欧州車に乗っている喜びをどっぷりと味わえるのがステキだ。V型8気筒のような疑似サウンドが室内に鳴り響くのはちょっとやり過ぎだと思うが、これだけの走りができてGTi250より31万円、GTi270に対しては82万円も安いとなると、素晴らしく魅力的な一台だと思う。

参考までにアリュール、GT、GTiとグレードを上げるに従ってそのスタビリティは高められて行くが、それはターゲットとする速度域の差があるだけで、基本的にプジョーの"猫足"特性は同じ。それぞれの領域において同じようにサスペンションをロールさせ、タイヤの接地状況をステアリングやシートごしにじんわり伝えてくれるから、ステイタスというよりは自分が走りたい速度域に応じてグレードを選んでくれれば良いと思う。
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【試乗記】プジョー「Blue HDi」搭載の308GT / 308SW / 508GT 長く乗るほどに、その良さは引き出されてゆく:山田弘樹 originally appeared on Autoblog Japan on Fri, 11 Nov 2016 03:00:00 EST. Please see our terms for use of feeds.
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