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フォルクスワーゲンのミニバンの歴史は「タイプ2」から始まる。
フォルクスワーゲンが最初に開発したクルマ、"ビートル"の愛称で知られるのが「タイプ1」だ。戦中は単にフォルクスワーゲン(国民車)と呼ばれていたが、戦後、「フォルクスワーゲン・タイプ1」と改名され、生産が再開された。
「タイプ2」は、タイプ1=ビートル をベースに作られたキャブオーバーバンだ。ビートルとともに根強い人気を誇るフォルクスワーゲンの名車である。それは1950年に登場する。
タイプ2は、用途によって商用のトランスポルター、デリバリーバン、ミニバスのクライネブス( ≒マイクロバス )があり、そのほかにも様々なバリエーションがあった。タイプ2は第1世代のT1、第2世代のT2、以下T3、T4と代を重ねT6に至り、総称してトランスポルターシリーズと呼ばれている。
そういう意味では「Golf Touran」はタイプ2の直系ではないが、BeetleベースのT2に対してGolfベースのGolf Touranという構図はそのままであり、また乗用車ベースのミニバンという点でもタイプ2におけるT1、T2と立ち位置がよく似ている。
さてGolf Touranだが、ベースが乗用車であること、そしてドイツメーカーであることが、そのキャラクターを決定づけている。
<写真:初代Golf Touran>
初代Golf Touranが登場したときも衝撃的だった。当時日本におけるミニバンは、快適性に重きが置かれていた。乗り心地の良さ、静粛性、シートアレンジの多彩さといったところが重視されていた。
ところが、初代Golf Touranは、ベースとなったGolf5をはっきりと感じさせるほど優れた操縦性を持っていた。重心の高さを上手に利用して、ロールによる横方向への荷重移動を上手に旋回性能につなげていた。
それだけにGolf7をベースにした2代目Golf Touranの操縦性には興味があった。初代Golf Touranも、当然Golf5がベースになっているが、Golf7はMQBによって、クルマのキャラクターを決定づける、といっても過言ではない、フロント車軸からリヤバルクヘッドまでを共通化してより色濃くGolf7のキャラクターを受け継いでいるのだ。
ちなみに、MQBというのは、ドイツ語の"Modulare Quer Baukasten≒モジュールキット"の頭文字を取ったもの。一般的にクルマは車種ごとにプラットフォーム開発しており、姉妹車や派生車種にプラットフォームを流用することはあっても、セグメントの枠を超えて使われることはなかった。ボディサイズが異なるのだから当然のことと考えられていたが、フォルクスワーゲンはこの枠を超え、PoloからPassatまでプラットフォームのコアとなる部分を共通にして、部品の共通化を行い、生産コストを削減し、クルマの価格を安く抑えようと、MQBを開発したわけだ。
単にパーツを共通化するだけでなく、エンジンマウント位置まで共通化するなど徹底した効率化が図られている。
こう書くと単なるコスト削減とみられそうだが、共通化することでコストの削減を行うとともに、プラットフォームのコア部分、具体的にはフロントアクスル及びステアリングユニットからバルクヘッド(室内とエンジンルームの隔壁)までを共通化するとともに、徹底的にコストをかけて開発している。
この部分はFF車の操縦性を決定づけるといっても過言ではない重要な部分。
だから、いざ試乗という段になって走らせてみると、意外なほどGolf7の匂いがしないことに、拍子抜けしてしまった。
もちろん、本質的にはGolfのテイストを色濃く受け継いでいるのだが、パッと乗った印象からすると、Golfをあまり感じさせないのだ。それよりも、Passatにも通じる乗り味の質感といったらいいのだろうか、高質な感覚が先に来て、あまりに普通に良く出来ていると感じられる。
ロール量が少なめで、4つのタイヤをピタッと路面に設置させながらスイスイ走ってくれるところはもちろんゴルフと似ているが、口当たりがマイルドというか、ゴルフ的なスポーティな味付けを抑えて、PassatとGolfの中間的な、乗り味の良さを狙った味付けなので、ゴルフを強く感じさせないのだろう。
とはいえ、ハンドルを切りだすと、応答よくスッとクルマは反応してくれる。鋭さはなく、むしろマイルドなので、乗る人に緊張を与えない。クセがなく普通によくできたミニバンなのだ。常識的なペースで走る限り。
ところが、ペースを上げたり、緊急回避的な運転操作をした時、そのダイナミック性能は驚くほどGolf7だった。マイルドに感じたステアリングレスポンスは、運転の激しさを増すほどに精度感が高くなり、数センチの精度感でクルマの行く先をコントロールできるほどなのだ。
ハイスピードなコーナーでも、重心の高さなどほとんど意識させず、4つのタイヤがピタッと路面をとらえたまま、実にバランスよく曲がってくれる。フロントタイヤだけが曲がっていくのではなく、ちゃんとリヤサスペンションがフロントサスペンションの動きを受けて、曲がるために仕事をしているのだ。
ブレーキもこれだけ(見た目に)重心が高いと、かなり前のめりなブレーキング姿勢になりそうだが、ノーズダイブを抑えてリヤブレーキをしっかり効かせている。実際ブレーキの安定性は抜群といってよく、とくに軽くハンドルを切った状態からフルブレーキングした時のリヤの安定性、姿勢の安定性は、出来のいいスポーツセダン並みだ。
実は限界領域だけでなく、常識的な速域でもオブラートにくるまれているが、Golfを感じさせる精度の高い操縦性はちゃんと持っている。例えば、カーブに向けてハンドルを切り出した時、高速コーナーのハイスピード走行と同じように、リヤサス(≒タイヤ) がハンドル操作に応答して、素早くコーナリングフォースを立ち上げているのだ。その結果、ボディごとスーッと曲がりだすような、フットワークの良さが発揮されているのだ。
ドイツでは、郊外路の制限スピードは100km/hで、丘を超えて町を結ぶカントリーロードはブラインドコーナーも普通にあり、道幅も決して広くはない。そうした道路環境の中を安心して安全に走るためには、優れた操縦性が必要になる。それをきちんと作り込んでいるということなのだ。当然それこそがクルマに求められる基本性能であり、GolfやPassat同様、Golf Touranにも当たり前のように備わっているということなのだ。
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【PR】Volkswagen Golf Touran 快適性や安全性をMQBで手に入れた Golf Touran:斎藤聡 originally appeared on Autoblog Japan on Thu, 18 Feb 2016 00:00:00 EST. Please see our terms for use of feeds.
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